自分で説明できないフィルタを、地図から取り外した話
📌 記事の取り扱いについて(公開当時の内容を含みます — タップで詳細)
本記事は公開当時の体験・気づきをまとめたものです。現在のツール数・プラン数・対象年齢・記事数・仕様とは異なる場合があります。最新の内容は各ツールページをご確認ください。ツールや外部サービスの仕様・料金は変更されることがあるため、利用前には各公式情報も併せてご確認ください。記載に誤りを見つけられた場合はお問い合わせフォームよりご連絡いただけると助かります。
「楽しめる以上」フィルタを、はじめて解剖しました
子連れおでかけ地図には、スポットを絞り込む「楽しめる以上」というフィルタがあります。内部の点数が一定以下のスポットを、地図の初期表示から落とす仕組みです。
この点数の決め方そのものは、カテゴリごとの基準や施設名の言葉から付ける、というルールとして書いてありました。ただ、その点数で線を引いた結果、実際に何が隠れているのかを、私は作ってから一度もちゃんと見ていませんでした。「点数の低いスポットを隠せば、地図がすっきりするだろう」くらいの気持ちだったのです。ある日、ちゃんとした公園が初期表示から漏れているのに気づきました。この点数はいったい何を隠しているのか。気になって、今回はじめて解剖してみることにしました。
フィルタの中から牛丼屋が出てきました
初期表示から外れる側に回っていたスポットは、約5万件ありました。内訳を調べて、頭を抱えました。
博物館が2.5万件。小さな街区公園が1.9万件。ここまでは、まだ分かります。規模の小さい施設が点数で沈むのは、想像の範囲内です。
問題はその先でした。牛丼屋やラーメン屋まで混ざっていたのです。子連れおでかけ地図の「楽しめる以上」フィルタが、博物館と街区公園と牛丼屋を、同じ理屈でまとめて隠していました。
そして一番まずかったのは、「なぜこの博物館は落ちて、あの公園は残るのか」を、利用者に説明できる形になっていなかったことです。基準はコードの中にはあるけれど、画面の上では「なぜか出ない」としか見えない。自分のツールなのに、です。
点数式の何が駄目だったのでしょうか
冷静に考えると、点数による足切りには根本的な弱点がありました。
まず、点数は利用者から見えません。地図に出てこない理由が「内部の点数が低いから」では、利用者側からは「なぜか出てこない」としか見えず、指摘のしようもありません。現に、ちゃんとした公園までが、この点数で黙って沈んでいた実例がありました。
次に、点数はカテゴリの違いを潰してしまいます。博物館と牛丼屋は、そもそも比べるものではありません。それを一つの数直線に乗せて一律に切るから、「規模は小さいが子連れには十分な公園」と「そもそもおでかけ先ではない店」が、同じ側に落ちます。
そして何より、基準を説明できない絞り込みは、直しようがありません。おかしな結果が出ても、どこを直せばいいのか分かりません。作った本人がこれなのですから、利用者にはもっと分かりません。
「チェックしたカテゴリだけ表示」に作り替えました
そこで、点数による足切りをやめることにしました。代わりに採用したのは、拍子抜けするほど単純な仕組みです。
公園や博物館を点数で二つに割って、「公園」と「小さな公園」、「博物館・科学館」と「資料館・郷土館」のようなカテゴリとして並べます。利用者は、見たいカテゴリにチェックを入れます。チェックしたカテゴリだけが地図に表示されます。それだけです。
この方式なら、あるスポットが表示されない理由は「そのカテゴリのチェックが外れているから」の一言で説明がつきます。大きな公園は見たいが小さな街区公園は要らない、という人はチェックを外せばいいですし、近所の小さな公園こそ知りたい、という人はチェックを入れればいいのです。判断するのは私の作った点数ではなく、利用者自身です。
作り替えの実装はAIの力を借りました。ただ、今回の中心は書き換えそのものではなく、「どう分ければ人に説明できるか」を考える時間だったと思います。
説明できないものは、載せてはいけませんでした
今回の一件で身に染みたのは、「自分で説明できない絞り込みは、利用者にはもっと分からない」ということです。
点数式は、作る側にとっては楽でした。一つの数字がまとめて線を引いてくれます。でもその楽をした分だけ、利用者から見た仕組みは説明のつかないブラックボックスになり、ちゃんとした公園を黙って隠し、牛丼屋を博物館と同じ箱に詰めていました。
一度中身をのぞいてみて、本当によかったと思います。あのまま点数を放っておいたら、私はフィルタの中身を見ないまま、「楽しめる以上」という自分でも意味を答えられないボタンを、地図に置き続けていたと思います。
これからは新しい仕組みを入れるとき、一つだけ自問することにしました。「この動きを、聞かれたら一言で説明できるか」。できないなら、それはまだ載せる段階ではないのです。
← 他の制作記を見る | トップ | お問い合わせ