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海のない県に「オーシャンビューの宿」特集ができていた話

公開: 2026-07-17 · #91 / 最終更新: 2026-08-10 ホテル検索失敗談データ整備

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ホテル検索のサイトには、テーマ別の特集ページがあります。「絶景の宿」「離れのある宿」といった切り口で、条件に合う宿をまとめて見られるページです。

こうした分類の多くは、宿の紹介文に含まれるキーワードで機械的にやっています。数万軒の宿を一軒ずつ人間が読んで仕分けるのは無理なので、この方式はとても便利でした。便利だったのですが、同じ型の間違いを、別々の場面で3回やりました。時系列に並べてみます。

その1・温泉に「触れただけ」の宿(春のはじめ)

最初は特集ページではなく、検索画面の「温泉あり」の絞り込みでした。紹介文に温泉への言及があれば温泉ありの宿、としていたら、実際には温泉が無い宿が混ざっていたのです。

どういうことかというと、紹介文で近隣の温泉に触れているだけの宿があるのです。周辺案内のつもりで書かれた一文が、機械には「温泉」の一致として拾われ、温泉のある宿に化けてしまう。温泉があると思って予約した人が現地でがっかりする姿を想像すると、これは放置できません。ここは紹介文の言及で判定するのをやめて、予約サイト公式の温泉情報に準拠する形へ変えました。

その2・「離れ」は一つじゃありませんでした(5月の末)

次は「離れ」の宿特集を作ったとき。母屋から独立した客室、いわゆる「離れ」に泊まれる宿を集めたページのつもりでした。

ところが「離れ」という言葉で素朴に拾うと、様子のおかしい宿が混ざります。「都心の喧騒を離れた」「街から離れた」——客室の離れではなく、**動詞の「離れる」**です。実装のメモには「素朴なキーワード一致だと、立地表現をおよそ3割も誤って拾う」と残っています。3割は多い。

人間なら読んだ瞬間に区別がつきます。「喧騒を離れた」を読んで離れの客室を想像する人はいません。でも、キーワードの一致だけで判断する機械には、この二つがまったく同じに見えます。ここは、動詞の活用形や「〜から離れ」のような言い回しを先に打ち消して、それでもなお名詞の「離れ」が残る宿だけを採用する、という判定に組み直しました。

その3・海のない県のオーシャンビュー(6月の半ば)

そして一番堂々とした間違いがこれです。「絶景・オーシャンビュー」の特集を47都道府県分まとめて作ったとき、見出しや説明文のひな形を、全県に同じ文面で当てはめていました。その結果、海のない内陸の県にも「オーシャンビューの宿」特集が生成されていたのです。

日本には海に面していない県が8つあります。その8県のページに、堂々と「オーシャンビュー」の文字。海がないのにオーシャンビューを謳ったら、それはもう嘘です。仕組みが勝手に嘘のページを作っていた、と考えるとけっこう怖いです。

これに気づいたきっかけは、自分のページの点検ではありませんでした。サイトに来た人がどんな言葉で検索しているかの記録に、「群馬 ホテル オーシャンビュー」という組み合わせが出ていたのです。海のない群馬でオーシャンビュー。その違和感から辿って、テンプレートの一律適用に行き着きました。

内陸の8県については見出しを「絶景の宿」という言い換えに差し替え、「内陸県のため海一望の宿はありません」という注記も入れて解消しました。山や湖の絶景なら内陸でも嘘になりません。言われてみれば当たり前の配慮なのですが、作る前の私はまったく想像していませんでした。

機械は「単語」と「ひな形」を疑いません

3つの間違いを並べてみると、種類は少しずつ違います。単語の一致を信じすぎた(温泉・離れ)、ひな形の一律適用を疑わなかった(オーシャンビュー)。でも共通しているのは、人間が読めば一瞬で分かる違いを、機械は疑いもしなかったということです。

機械の側からすれば間違えてすらいません。文字列は一致していたし、ひな形は指示どおり全県に当てはめただけです。間違っていたのは、そういう判断をさせた私の設計のほうでした。

対処は地道でした。除外の言い回しをルールに足し、判定の根拠を公式の情報に寄せ、一律のひな形には例外の県を教える。誤りを見つけるたびにルールを一つずつ足して、AIと手分けして潰していく作業です。

学び・気づく入口は、意外なところにあります

今回の学びは二つあります。ひとつは、キーワード分類やひな形生成は便利ですが、生成した結果を疑う工程を仕組みに入れないと、嘘のページを量産するということ。

もうひとつは、間違いに気づく入口は自分の目だけではない、ということです。オーシャンビューの件を教えてくれたのは、来訪者の検索の言葉でした。自分では海のある県のページばかり見ていたので、たぶん自力では当分気づけませんでした。どんな言葉でサイトに来ているかの記録は、集客の分析だけでなく、間違い探しの装置にもなる。これは思ってもみなかった副産物でした。

機械に大量のページを作らせるのは、一人で運営している身にはありがたいです。ただ、作らせたものの責任は私にあります。日本語の文脈は、まだ当分、人間の目の仕事らしいです。


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